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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)63号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人桑原五郎の上告理由について。

所論(一)(1)の投票についての原判決の説明は、首肯するに足り、所論は理由がない。所論(一)(2)の投票については、原判決の認定によれば、細迫兼光は山口県選出の代議士であり戦時中小野田市長を勤めたこともあり、山陽町付近では著名の実在人であるというのであるから、細迫兼光と表示された所論投票は同人を念頭において同人に投票する意思でなされたものと認めるのが自然であり、「兼光」と「左文太」とは全く類似性のない点からみても、右投票の表示を細迫左文太の氏名を誤記したものと解するのは困難である。されば、この点に関する原審の判断は相当であつて所論も理由がない。所論(二)(1)ないし(12)の投票を白石候補の有効投票と解すべきものとした原判決の説明も首肯することができる。所論は農業共同組合理事に白石某があり著名人と解すべきであるから同人に投票した者も絶無でないというのであるが、かかる主張は原判決の認定しない事実を前提とするものであつて採用できない。それゆえ、原判決の判断は正当であり、これと反する見解を前提とする違法違憲の主張はすべて採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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